フレーバーの豊富さに加え、お手頃な価格で人気を博している「ラスク」。ここ数年ラスクブームが続いており、ラスク専門店も未だ各地でオープンしています。みなさんご存知の通り、ラスクはもともと硬くなったパンをおいしく食べるために再利用して作っていたお菓子です。パンの切れ端や残り物のパンで作ったラスクが袋いっぱいに詰められ、パンの耳と同じような扱いでパン屋に陳列されていた光景を目にした人も少なくないことでしょう。

それが今では「スイーツ」の仲間入りを果たし、マカロン同様に人気なわけですから面白いものです。個包装されて見た目が綺麗になったからといって、ラスク専門店のラスクがパン屋のラスクよりおいしいとは限りません。バッシングを受ける覚悟で言いますが、はっきり言ってそうおいしいラスクはありません。ブームに騙されてはいけないわけです。

特にブームに便乗して新規オープンしたラスク専門店は要注意。スイーツ全般に言えることですが、ブームに乗って作ったお菓子はおいしくないことが多いのです。例えば1990年頃に大流行したティラミス。この頃はティラミスに必要不可欠なマスカルポーネチーズを使用せず、安価なクリームチーズで代用した似非ティラミスを製造していた洋菓子店がどれほど多かったことか。おいしければいいのですが、マスカルポーネチーズで作ったティラミスはクリームチーズで作ったティラミスとはやはり別物。筆者が洋菓子職人だった当時、まずいティラミスのからくりを知って随分がっかりしたものです。

さて、話をラスクに戻します。ブームに乗ることなく、30年以上前からこだわりのラスクを丁寧に焼き続けている店があります。こちらは山形県のラスク専門店「麦工房シベール」というお店で、ラスクのために焼き上げたこだわりのフランスパンと、ラスク用に作られたシャトーバターの上澄み、そしてグラニュー糖でこのラスクを焼き上げています。サクッとしたパンの軽さに、上澄みバターの上品で洗練された味わい、バランスのとれた優しい甘さはいつ食べても変わらないおいしさ。もともとはフランスパン屋だったという同店だからこその味わいだと思います。値段は14枚入り(2枚ずつの個包装)で450円。

このラスクと、巷で騒がれているラスクを食べ比べてみてください。バランスのよさに驚くはずです。みなさんもスイーツブームに騙されず、ご自分の舌でへんてこスイーツたちと戦ってみてくださいね。

(執筆・写真/sweetsholic)

参照元:麦工房シベール「バーチャルラスク博物館」