運動神経がないからスポーツなんて大嫌いと嘆いているそこのあなた、ある方法を使えばあなたの運動オンチが解消されるかもしれない。その方法とは、脳に電流を流し、「GABA」を減らすというものだ。

GABAとは、脳の興奮やイライラを抑えてくれる神経伝達物質のことで、現在そのリラックス効果から様々な食品に使われている。しかし脳内のGABA分泌量が多いと、運動学習能力が下がってしまうのだとか。

というのも、GABAには脳細胞がオーバーヒートするのを防いだり、脳細胞間の活動を維持可能なレベルまで下げたりするという働きがあり、これが新しい運動を覚える際、脳の活動を邪魔しているらしいのだ。したがって、運動神経がいいとされる人は脳内のGABAを減らせる能力を持っており、そのおかげで人よりスムーズに運動が学習できるというのだ。

この原理を生かして、オックスフォード大学の科学者たちは、被験者の運動学習能力の向上を試みた。その方法とは、12人の被験者の脳に微量の電流を流し、脳内にあるGABAを減らすというものだ。そして被験者のGABAを最大30パーセントまで減らしたところ、運動学習のスピードが70パーセント上昇するという驚愕の結果が出た。

この電流によるGABAの減少は約1時間続いたのだが、他の研究によると電流を定期的に流し続ければ、これよりはるかに長いGABAの減少をもたらすことができるのだとか。また、今回使われた脳に電流を流す技術は、脳卒中患者が運動神経をリハビリする際にも使われており、いろんな人を救える可能性も秘めている。

脳内のGABAを減らし、意図的に運動学習能力を上げようと今回の試み。確かにGABAが減れば、運動学習能力は上がるかもしれないが、それと同時にイライラしやすくなるのではないかという不安も出てくる。なにかを得るためには、なにかを失わなければならない。やはり、世の中そう甘くはないようだ。
(文=田代大一朗

photo by flickr AdamKR
参照元:The Telegraph(英文)