長らく原因が不明とされていた、うつ病発症のメカニズムについて、アメリカの研究者が新たな研究発表を行った。それよると、うつ病は遺伝すると、精神医学専門誌で伝えられているのである。食欲やストレスをつかさどる脳内化学物質の神経ペプチドY(NPY)の分泌が、遺伝的に少ない傾向の人は、うつになるリスクが高いというのだ。

この研究論文を発表したのは、ミシガン大学の研究者たちだ。彼らはこの事実を「アーカイブズ・オブ・ジェネラル・サイカイアトリ」に掲載。独自に行った3つの調査について明らかにした。調査は次の内容である。

まず、被験者をNPYの発現レベル「高・中・低」に応じて、3つのグループに区別。そして、次の3つの単語を見せた。とくに意味のない言葉「物質」、ネガティブな言葉「殺人者」、積極的な意味を持つ「希望」である。そのときの様子をMRI(核磁気共鳴画像法)を用いて、脳内活動を観察したのだ。すると、ネガティブな単語に対して低NPYの被験者たちは、感情をつかさどる前頭前野の活動が強くなった。一方で、高NPYの被験者はその反応がずっと小さかったのだ。

次に、食塩水を被験者のアゴの筋肉に注射し、20分ほど痛みを与える試みをした。そして、その前後で被験者が感情をどう表現するかを観察した。すると低NPYの被験者たちは、注射の前後ともに他の被験者に比べて、よりネガティブになることが判明。彼らは痛みを予想したり、思い返したりして、感情面での影響をより強く受けていたのだ。

さらに、うつ病の患者たちがもつNPYの遺伝子型を、うつではない人たちと比較してみたところ、低NPY人はうつ病患者に圧倒的に多く存在することがわかったのである。

この調査により、低NPYの人はネガティブなことに脳が強く反応し、肉体的な苦痛が心理的に作用する傾向が強いことが明らかとなった。調査に携わったジョンカー・ズビエタ博士は、「私たちはNPYの遺伝的なばらつきを特定した。おそらくNPYは、うつ病のリスクと何らかの関係があるだろう」と説明している。

科学者たちはこの発見で、うつやその他の精神疾患の早期診断と治療だけでなく、うつになりやすいかどうかのリスク測定にも役立つと期待している。患者の遺伝子情報をもとに治療が行われるようになる日も、近いのではないだろうか。

参照元:dailymail(英文)