国民の大部分をイスラム教徒のマレー系が占める、イスラム国家・マレーシア。
マレー系だけではなく、幾つもの民族が共存する多民族社会であり、信仰の自由も保障されている。

首都・クアラルンプール(KL)をはじめ、中華系・インド系の占める率が高い町では宗教の香りをあまり感じないが、州によってはガチガチのイスラム法に支配され、露出度の高い女性のセクシーな服装や化粧はおろか「ボクシング選手のはいているパンツが短すぎる。けしからん」などという話題が真面目に議論されることも珍しくない──という。

ホントかよ? と、にわかに信じられなかった私だが、先々週も紹介したKLで最も古く、さびれっぱなしの電脳中心「インビ・プラザ」をさまよっていたところ、遂にその片鱗らしきものを見ることができた!

お昼過ぎ、閑散としたインビプラザをうろついていた時のこと。

私の前方にいたガタイの良いひげおやじが腕時計を眺めながら突然、立ち止まり、持っていた手提げ袋から何やら大きめの布を取り出すと、シャッターをおろしたPCショップの前にそれを敷いた。

続いてサンダルを脱いだおやじは、シャッターに向かう形で敷物に正座。後ろで私が見守るなか、高々と両手をあげては這いつくばり、PCショップ目がけて祈りだしたのである。

言うまでもないが、彼はPCショップに祈っているのではなく、(おそらく)その延長線上にあるだろうメッカに祈りを捧げているのであった。

けれども、事情を知らない観光客がこんな光景に出くわした日には、閉じたシャッターの中に、何かとてつもなく神聖なものが隠されているのでは……? なーんて、誤解をする可能性も考えられますよね。ますよね?

皆さんもマレーシアで祈る人を目撃したら、くれぐれも彼らの神聖なひとときを邪魔しないよう、そっと見守っていてほしい。でもって、買い物に夢中で蹴つまずかないよう、日中はしっかり前を見て歩きましょう。
(取材・文・写真=クーロン黒沢

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