1月18日の『芸人報道』では、緊急特別企画「ピース綾部は天狗になっている!? 検証SP」が放送された。これは、出演者の1人である綾部本人には秘密にされていたドッキリ企画。すさまじい勢いで売れっ子街道を突き進んでいる綾部の周りでは、「最近売れて調子に乗っているのでは?」という声があちこちで聞かれるようになっていた。この日は、いろんな人物の証言を交えて、そんな「綾部天狗説」の真相を究明していた。

「栄ちゃん(矢沢永吉)のような身振り手振りで話すようになった」
「一度共演しただけの関係なのに、嵐の二宮和也のことを勝手に『ニノ』と呼んでいる」
「女性スタッフの連絡先を聞いて、用もないのにやたらと電話してくる」

ふたを開けてみれば、次々に飛び出す天狗エピソード。言い逃れのできない状況に追い込まれ、綾部はなすすべもなくうろたえるばかり。そんな彼に、とどめの一撃として繰り出されたのが、司会の雨上がり決死隊・蛍原による「ある女性と電話がつながっています」という一言。これによって、綾部の動揺はピークに達した。この手のバラエティでは、過去の女性関係をばらされてしまう、というのがお約束となっているからだ。

ここで、悲劇が起こった。「心当たりがあるなら、先に言っておいた方がいいよ」という共演者からの悪魔のささやきに導かれて、綾部は自分から最近付き合いのあった女性の存在をばらしてしまう。

「絶対あいつだ。浅草のうなぎ食いに行った……45歳の……」

ここまで話が出た段階で、電話の相手の正体が明かされる。それはなんと、綾部の母親だった。つまりこれは、番組が綾部に仕掛けた罠だったのだ。鎌を掛けられて、まんまと45歳の女性と付き合いがあったことを告白した綾部は、その一部始終を実の母親に聞かれてしまったのである。

「うわー、すげえバカなことした!」と、頭を抱える綾部。周到に仕掛けられたトラップが見事に決まって、番組としては最高の盛り上がりを見せた。だまされた綾部本人にとっても、ここで芸人として「おいしい」思いができたことは、長い目で見ればプラスになるに違いない。番組スタッフや共演する芸人の、綾部に対するひねくれた愛情を感じる優れた企画だった。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田

イラスト:マミヤ狂四郎