1月3日、『ゴッドタンスペシャル』が放送された。この日の企画は恒例となっている「芸人マジ歌選手権」。歌うことに情熱を持った選りすぐりの芸人たちが、真剣に作った楽曲を全力で披露する、というもの。スタジオに集められたゲストたちは、牛乳を口に含んだ状態でそのパフォーマンスを見守り、笑ってそれを吹き出してしまわないように必死で我慢する、というルールになっている。

この日も、女装してガールズポップを熱唱するバナナマン日村、特殊メイクの域に達した仮装で出オチの美学を貫く劇団ひとりなど、ハイレベルな熱演が続いた。「マジ歌」という何でもありの設定の中で、それぞれの芸人が好き勝手に暴れる様子は実に痛快で面白い。

中でも特筆すべきは、「マジ歌」の代名詞とも言える存在である東京03の角田晃広。この番組で見せた大竹マネージャーとのユニットが評判を呼び、『若者たちへ』という楽曲でCDデビューを果たしている逸材だ。

そんな彼が今回は、大竹マネージャーの同級生である一般人の川崎さんを引き連れて、『ココロノハコ』という曲を演奏。大竹、川崎の両名がプロ顔負けの演奏技術で見る者を圧倒し、途中から加わったカメラマンの風間さんもドラムを叩いて大いに場を盛り上げた。

結果的に、3人の演奏があまりに上手すぎて、ボーカル担当の角田の印象が薄くなり、MCとゲスト達はそんな彼に「角ちゃん(角田)の印象ないね」「このバンド、角ちゃんいない方が面白い」と冷たい言葉を浴びせた。それに対して角田がとっさに切り返した。

「全員で俺を食ってんじゃねえよ!」

これで見事にオチがついて、角田のバンドは確かな存在感を示すことに成功した。東京03のコントの中でも、角田は理不尽な状況に巻き込まれて、あきれたり逆ギレしたりするキャラクターを演じることが多い。今回の「マジ歌」では、そんな角田が「あきれ顔と逆ギレ」の職人芸を見せくれた。個々の芸人が持ち味を生かして、最高のパフォーマンスを披露した番組となった。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田

イラスト:マミヤ狂四郎