カンボジアを旅すると、そのへんの貧乏そうな兄ちゃん、姉ちゃんが、iPhone4だのXperiaだの、現行バリバリの端末をこれ見よがしに持ち歩く光景に思わず見とれてしまう。うわー。おれよりいいケータイ使ってる……。ニセモノかと思いきや、結構な確率でホンモノだ。
 
東南アジアでは携帯端末の見てくれ=その人の経済状況・社会的地位なので、借金しても年収を上回るハイグレードケータイを買う見栄っ張りが後を絶たない。で、彼らの端末をじっくり観察すると、まず間違いなく透明フィルムでラミネート加工されている。

よくある液晶保護シートとは異なり、液晶以外の部分もすっぽりラミネートするのがカンボジア流。埃が多く、日差しの強いカンボジアでは、色あせたり、くすんだりするスピードも五倍速。少々落としても、引っかいても、フィルムを剥がせば新品同様。ピカピカなら売るときも高い値がつく。

カンボジアの携帯ショップには、熟練のラミネート職人が常に待機しており、3ドル程度でぴっちぴちの、気泡ゼロで包んでくれる。包む際、新品の端末にかみそりの刃を立てたり、ライターの炎をブワッと浴びせたり、次々繰り出される掟破りのテクニックに見てる方はドキドキしっぱなしだが、端末にダメージが及ぶことはまずない。これぞ職人技である。

ケータイだけでなく、デジカメやノートPCはおろか、神経質なカンボジア人は新しいバイクを丸々一台、ラミネートしてしまう。お値段10〜20ドル程度。そんな、ラミネート文化花盛りの昨今。妙な広告看板をつけたトゥクトゥク(三輪タクシー)を目撃した。そこには、神妙な顔でポルシェを包む男の姿が!

早速問い合わせると、ホントに車専門のラミネート屋だった! 紫外線や跳石から塗装を守るためのもので、車全体を包んで200ドル(車種により異なる)。アメリカや日本にも同様のサービスはあるが、フロント周りだけ、ドア周りだけ……と部分的に貼り込むケースがほとんどで、ヘッドライトだけで2万円とか、むちゃくちゃ高い。

フィルムの品質とか、職人の荒っぽさとか違いはあるだろうが、さすがは人件費激安の最貧国。どこでもドアがあったらひと儲けできたのに。
(取材・文・写真=クーロン黒沢

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