アジアの裏路地にひろがる深淵を検証すべく、世界を旅して15年。

11月20日から3日間、カンボジアのプノンペンでウォーターフェスティバルが開かれた。全土から選抜した腕自慢がトンレサップ川でボートレースを行い、3日間で数百万人の観客が集結するというカンボジア最大の祭りである。

警備は超適当。あちこちで押し合い、へし合い、喧嘩の絶えない混沌の3日間。今年は22日夜に起きた事故で400人あまりの死者が出る――という大惨事になってしまったが、事件前夜と前々夜、事故現場から歩いてわずか5分の特設リングで、日本を代表する4名の女子プロレスラーが死闘を演じていたのだった!

井上京子がカンボジアに来訪、謎のプロレス大会に乱入する……という噂はひと月ほど前から耳にしていた。だが、当日になっても試合場所がはっきりせず、午前中は情報収集に忙殺される。

当日の午後になり、ようやく試合場所をうっすら(完全ではない)特定。平日朝8時半の埼京線みたいな混雑をかき分け、川沿いをうろつくこと約1時間。歌謡ショーが行われていたステージ真横の原っぱに、特設リングを発見!

鉄柵で囲まれた妙に小さなリングは立ち見オンリー。入場料も無料のご自由にどうぞ状態。
はじめガラガラでどうなることかと思いきや、最終試合が近づくにつれ人口密度は上がりっぱなし。前後左右のおっさんと身体が密着。身動きすらとれず、濃い目の塩味で蒸し上げました……みたいな感じでかなりツライ状況に。

足元ではわずかな隙間に無理やり入り込んできた廃品回収の子供たちが、何ともいえない体臭を撒き散らしながら試合に見入っていて、小さなプロレスファンの健気な姿に心癒された私だが、でもちょっと臭かったな……。

最終試合。井上京子、伊藤薫、蹴射斗、佐藤綾子の四選手がリングに登場。日本選手オンリーのタッグマッチが始まった! まさか、こんな場末の場末でナマの井上京子を拝むことになるとは……。

試合は空中殺法も飛び出す熱戦。ムラのありすぎるカンボジア人レスラーの前座試合でしらけきっていた観客を沸かせまくり。流石はプロ!

後日、彼女たちが大圧死事故のわずか数十分前にあの橋を渡り、九死に一生を得ていたことが判明。詳細は井上京子選手伊藤薫選手のブログで!
(取材・文・写真=クーロン黒沢

▼大混雑の会場周辺

▼これが特設リングだ!

▼スポンサーの「レスラーワイン」

▼ 試合を待つカンボジアのプロレスファン

▼鋭いキックに呆然と立ち尽くすレフリー

▼コーナーポストから場外にジャンプ!

▼井上京子・伊藤薫組が勝ちました